重要度と緊急度のマトリクス

優先順位を整理するときに、僕が今もよく頭の中で使っているのが、重要度と緊急度で切った四象限のマトリクスです。古典的な手法で、目新しさはありません。ただ、研究という文脈に当てはめると、この枠組みは単なるタスク整理を超えた意味を持ちます。
四つの領域を研究の日常で見る
縦軸に重要度、横軸に緊急度を取り、目の前のタスクをどこに置けるかを考えます。
重要かつ緊急 の領域には、締め切りが迫った予稿提出、明日のゼミで使うスライド、査読コメントへの返信といった、今すぐ手をつけなければいけないものが並びます。ここに入ったタスクは避けようがありません。問題は、あなたの研究生活がここだけで埋め尽くされていないか、ということです。
重要だが緊急ではない 領域――これが研究者にとって本当の勝負どころだと僕は思っています。新しい研究テーマを温めること、読まなければと思っている基礎文献、時間をかけて手を動かす予備実験、メンターや共同研究者との雑談に近い対話。明確な締め切りはないのに、半年後・一年後のあなたの研究の質をほぼ決めるのはここです。
緊急だが重要ではない 領域は、他人の締め切りに巻き込まれた作業、儀礼的な対応、反射的に返していいメールなどが入ります。短く片付けるか、丁寧に断るか、別の人に渡せないかを考える対象です。
重要でも緊急でもない 領域は、無目的なSNSや通知チェック、なんとなく開いた動画です。ここは減らすほど、上の三つに使える時間が増えます。
研究者が特に気をつけたいこと
研究で厄介なのは、「重要だが緊急ではない」領域のタスクほど、自分から見に行かないと気づけないことです。論文の締め切りは向こうからやって来ますが、新しい研究のアイデアを練る時間は、誰もあなたに催促してくれません。だからこそ、この領域を守るために、あえてカレンダーに枠を確保する、といった仕組みが要ります。
もう一つ、研究室や学会での雑務は「緊急かつ重要そうに見える」タスクの形で来ることが多いです。本当にそうなのかを一呼吸置いて考えるだけで、不要な巻き込まれはかなり減らせます。
使い方の勘どころ
マトリクスは毎日細かく埋めるようなものではありません。週のはじめ、あるいは計画が崩れていると感じたときに、手元のタスクを一度書き出して四象限に放り込んでみる、くらいの粗さで十分です。
そのうえで問いたいのは、「重要だが緊急でない」領域に、今週どれくらいの時間を置けそうか、ということです。ここに時間を置けていなければ、今は火消しに追われているサインと受け取ってください。要するにこのマトリクスの肝は、誰にも急かされないが長期的な価値を持つ領域に、意識的に時間を置き続けられるかどうかに尽きます。