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第5部:研究スキルと実践知

研究スキルのツールボックス

ここからは、研究を形にするための具体的な技法を扱います。 論文の構造、メソッドの選び方、データの扱い、執筆や図表の作り方――研究の品質を直接左右する、道具箱のような部分です。 第3部では研究実践の流れを地図として眺めましたが、この部ではその地図のなかで繰り返し使う道具を、一つひとつ取り出してじっくり見ていきます。

この部で扱うのは、論文の構造(IMRAD)と種類(ジャーナル・会議論文)、論文から逆算する研究設計、定性・定量・システム開発というメソッドの選び方、実験・調査の設計とデータ収集・分析と再現性、論文執筆のプロセス(タイトル・アブスト・イントロ)、関連研究の探し方・読み方と引用の作法、そして図表・可視化と校正・リライト――かなり盛りだくさんですが、研究を一本仕上げるために必要な道具がだいたい揃うように章立てしています。

技法は「概念を贈るための道具」

一つだけ、先に書いておきたいことがあります。 僕は、研究スキルを「きれいな論文を仕上げる技術」とは捉えていません。 あなたの発見を、一つの概念としてはっきり表現し、適切な名前を付けて他者に渡す――その営みを支えるのが、この部で扱う技法たちだと思っています。

論文構造は、概念を論理的な順序で読者に届ける骨組み。 メソッド選択は、概念を検証可能な形で支える土台。 データ分析は、概念を量的・質的に裏付ける手段。 可視化は、概念を直感で理解できる形に翻訳する技。 そして執筆技法は、概念を明確に定義し、名付ける言葉の仕事。 こうして並べてみると、技法と概念は別物ではなく、技法は概念を贈るための道具なのだ、ということが見えてきます。

第3部の冒頭で「現象ではなく概念を目指す」と書きましたが、その延長線上にこの部があります。 技法はあくまで道具ですが、道具が手に馴染んでくると、研究で見えてくる景色も変わります。 最初は不器用でも、繰り返し使ううちに身体化されていく――そういうものだと思って、気長に付き合ってみてください。

必要な章から拾い読みしてもらって構いません。 執筆で詰まったら writing_process、方法選びで迷ったら methods、というふうに、実務で困ったタイミングで開いてもらえるように書いています。 頭から順に読破する必要はないので、研究の現場で必要になったときに必要な箇所を取り出してください。