研究室の研究テーマ
研究の究極目標
古池研究室の研究は、一言でまとめると 「人間の思考と学習を最適化するシステムの開発」 という究極の問いに挑むものです。
この問いを解くため、研究室では知識の構造化と再利用、認知スキーマに基づく学習支援、誤りを資源とする学習支援、情報過多環境下での意思決定支援といったキーフレーズを重視しています。これらの観点から、多様なプロジェクトが展開されてきました。
代表的プロジェクト
CHUNK(Componentization of Human Understanding and Knowledge)
CHUNKプロジェクトは、問題解決過程における知識の「塊」(チャンク)の生成と利用を支援します。特にプログラミング教育やコンピューティング教育において、知識をモジュール化し、再利用可能にすることを目指しています。
学習者が一度獲得した知識や技能を、新しい問題場面で効果的に活用できるようになることで、学習の効率性と拡張性を同時に高めることができると考えています。
CLOVER(Computational Learning Optimization with Variform External Representations)
CLOVERプロジェクトでは、誤りや失敗を単なるミスではなく「学びの機会」として積極的に活用します。多様な外部表現(例:可視化、シミュレーション)を用いて、学習者の試行錯誤を支援し、理解を深める仕組みを開発しています。
従来、間違いは避けるべきものとして扱われがちでしたが、適切に構造化された学習環境では、誤りこそが深い理解への重要な手がかりとなることに着目しています。
OCEAN(Optimizing Cognition by Engagement of Agent's Navigation and Negotiation)
OCEANプロジェクトは、情報過多の環境下で、学習者が自律的に意思決定・自己調整できるよう支援します。認知的徒弟制(cognitive apprenticeship)の考え方を取り入れ、エージェントを通じたナビゲーションと交渉を行います。
現代社会では膨大な情報に囲まれて生活していますが、その中から自分に必要な情報を選択し、効果的に学習を進めることは容易ではありません。このプロジェクトでは、学習者の認知的負荷を軽減しながら、自律的な学習を促進するシステムの開発を目指しています。
学際性と統一感
一見すると多様に見えるこれらのプロジェクトですが、すべて「認知の最適化」という大きなビジョンに貫かれています。学習科学、認知科学、AI、知識工学、教育工学といった分野を横断し、工学的な合理性に基づく支援の設計と実装、効果検証 を一貫して行うのが古池研究室の特徴です。
理論的な基盤をしっかりと築きながら、実際に動作するシステムを開発し、その効果を実証的に検証する。この三位一体のアプローチにより、学術的な価値と実用的な価値を両立させた研究を追求しています。
この章のまとめ
古池研究室の研究テーマは、人間の思考と学習の最適化という共通の目標の下、多様なアプローチで展開されています。CHUNK、CLOVER、OCEANといった代表的プロジェクトは、それぞれ異なる角度から認知プロセスの理解と支援に取り組んでおり、学際的な知見を統合した工学的アプローチが研究室の大きな強みとなっています。