自分の時間の使い方を振り返る
研究活動を続けていくうえで、時間の使い方を振り返る習慣は、単なる効率化の技術にとどまらず、自己理解や研究者としての成熟に直結します。特に、研究という曖昧でゴールが見えにくい営みでは、自己調整力が成果を左右することが多いのです。
行動の可視化と記録
まず重要なのは、自分が時間をどう使っているのかを「見える化」することです。これは驚くほど見落とされがちです。人は主観的な感覚で「今日は頑張った」「全然できなかった」と思いがちですが、その感覚は実態とズレていることが多いのです。
たとえば、「午前中は研究に集中するつもりが、メールと雑務に追われて終わった」「午後のつもりの作業が夜にずれ込んだ」ということはよくあります。こうしたズレに気づくには、日々の活動を細かく記録し、カテゴリ別に分析する必要があります。手帳やカレンダーアプリ、タスク管理アプリを用いると、あとから振り返るときに役立ちます。研究者にとって、「自分の行動をデータ化する姿勢」は、研究そのものと通じるものがあると言えるでしょう。
振り返りの問いを持つ
記録ができたら、それを眺めて「なぜそうなったのか」「他にもっと良いやり方はなかったか」と問いかけます。ここでは、責めるのではなく問いかける、という態度が大切です。
たとえば、集中できない時間帯があるとき、「なぜダメだったのか」ではなく「どうすれば次はもっと集中できるか」を考える。あるいは、「やるべきでないタスクに時間を取られたとしたら、そもそもそのタスクは外注や省略が可能か」を検討する。振り返りは単なる反省会ではなく、次の行動のための仮説生成の場です。
振り返りの習慣化の価値
多くの学生や若手研究者が「日々の忙しさ」に流されるなかで、振り返りを習慣化できる人は意外と少ないものです。だからこそ、それができる人は一歩抜きん出ます。振り返りは、効率化やパフォーマンス向上のためだけでなく、自己理解やメンタルヘルスの安定にもつながります。
私自身も、日々の終わりに「今日の差分」を振り返り、どこが予定通りで、どこがズレたか、なぜズレたかを確認するようにしています。このプロセスは、「できなかった自分」を責めるのではなく、「次にどうするか」に頭を切り替える大事な習慣です。
この章のまとめ
- 研究者は「時間の使い方を記録し、可視化する」ことから成長が始まる。
- 記録を分析し、問いを立てることで次の行動改善につなげる。
- 振り返りは反省ではなく仮説生成の場と考える。
- 習慣化できる人は少ないが、それだけに大きな差を生む。
- 振り返りは効率化だけでなく、自己理解やメンタルの安定にも貢献する。