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研究発表と論文化

研究は、自分の中で完結させるものではありません。むしろ、発表や論文化を通じて他者と知を共有し、学術コミュニティに貢献することで初めて価値が生まれます。発表の機会は、自らの研究を見直し、整理し、他者の視点を受け入れる場でもあります。研究を公にすることで、私たちは問いを研ぎ澄まし、考えの精度を高め、次のステップへ進む手がかりを得ることができます。

学会発表:予稿から本番まで

学会発表は、研究者としての訓練の場であり、成長のきっかけとなります。 発表に向けた準備は、いくつかの段階を踏んで進められます。

まず、予稿の作成では、限られた文字数の中で問い、方法、結果、考察を簡潔かつ的確にまとめる力が問われます。予稿は単なる報告書ではなく、自分の研究の核がどこにあるのか、何を主張したいのかを明確にするプロセスです。この段階で、研究の全体像を再構成し、不要な情報や論点のズレを整理することが求められます。

次に、発表練習では、聴衆の立場に立って話を構成し直します。スライドの順序や情報量、話す速さや言葉の選び方など、伝わりやすさに焦点を当てます。練習を通じて、時間内に話を収める感覚や、予想される質問をシミュレーションし、落ち着いて対応できる準備を整えます。

本番では、多くの人が緊張を感じます。それは自然なことです。大切なのは、緊張をなくすことではなく、緊張しながらも研究の核心を伝えることです。質問を受けた際は、わからないことを恐れず、質問の意図を確認し、考えを整理して応答する姿勢が重要です。後から調べて回答を補足する柔軟性も、誠実さの一部といえるでしょう。

発表の意義と学び

学会発表は、単に「研究の成果を報告する場」ではありません。それは、自分の問いや方法が他者にどう受け止められるのかを知る機会であり、研究を共同体の中で育てる第一歩です。発表を通して得られるのは賞賛や評価だけではなく、時には厳しい指摘や思わぬ視点です。こうした対話の中で、研究者としての思考の幅と深さが養われていきます。

この節のまとめ

  • 発表は研究を整理し、問いの本質を見直す機会である。
  • 予稿作成は論点の明確化、練習は聴衆への伝達力の向上、本番は誠実な対話の場と位置づけよう。
  • 質問や指摘は研究を洗練させる財産であり、謙虚かつ柔軟に受け止める態度が大切である。