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第1部:なぜ研究するのか

人生の選択と主体性

研究は、手順を踏めば成り立つ営みではありません。何を問いとして取り上げるのか、なぜそれに時間と労力を投じるのか、思うように進まない時期をどう持ちこたえるのか——研究の質は、こうした判断のしかたにかなり強く規定されます。そして、その判断は、あなたが「どう生きたいか」というもっと大きな問いと、地続きでつながっています。手前にあるはずの問いを保留したまま技法だけを身につけても、その技法はうまく根を張ってくれない、というのが僕の実感です。

だからこの第1部では、研究法そのものではなく、その手前にある問いを四つの角度から扱います。最初は そもそもどんな人生を送りたいか という大きな話、次に効率やスピードとは別の軸で 研究の生産性を捉え直す 話、それから研究につきものの 失敗や批判とどう付き合うか 、最後に姿勢としての研究者像と職業としての研究者像を 「研究者」になるという選択 として整理します。

伝えたいのはつまり、研究を「技術」ではなく「生き方」として捉える視点です。「自分は研究に向いているのか」と問われたとき、僕はいつも、その問いを別の角度から見直してみてほしいと答えます。向き不向きの前に、あなたがどんな人生を送りたいかという話があるはずだからです。

研究室に入ったばかりの人も、進学を考えている人も、研究という言葉を遠くから眺めているだけの人——どの位置で読んでもかまいません。すぐに答えが出なくても、答えを保留したまま第2部以降に進んで、ときどきここに戻ってきてもらえると嬉しいです。技術の話は、その後でいくらでもできます。