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採択・リジェクトから学ぶ

「やっと採択された!でもこれで終わりじゃないのか」「リジェクトされて気力が湧かない」――査読結果はどちらであっても、その日の気分に大きく響きます。研究者を続けるかぎり、この振れ幅とは長く付き合っていくことになります。ただ、採択もリジェクトも、研究者として長く続けていく途中の通過点にすぎません。ここではそれぞれの結果をどう受け止め、次にどうつなげるかを整理します。

採択されたときに考えること

採択通知が届いた日は、研究の喜びを味わう日です。長い準備、査読のやり取り、修正の労力――それらが報われた瞬間を、ちゃんと味わうことは大事です。研究は成果が出るまでの時間が長い営みなので、こういう節目で自分に区切りをつけておかないと、息が続きません。共著者や、その研究を応援してくれた人たちに連絡して、お祝いの気持ちを共有するのもおすすめです。

ただし、採択後に送られてくる校正刷り(プルーフ)は、想像以上に誤字や図表の乱れが潜んでいます。「もう通ったから」と油断せず、最後まで細部に目を通します。誤字脱字、引用番号のずれ、図表の解像度、共著者の所属情報や連絡先、数式の表示崩れ、参考文献の抜け――これは本当に最後のチャンスです。出版されてしまえば訂正は公式な手続きが必要になります。校正の段階で抜け漏れに気づいた論文を、出版後に直そうとしてやけに苦労した経験が僕にも何度かあって、いまでは校正版を二日かけて読み返すのを習慣にしています。

論文が公開されたら、所属機関のページ、SNS、学会発表などで届けにいきます。ただし、誇張せず、限界も添えて伝えること。「この技術ですべてが解決する」みたいな煽り方をすると、一時的に注目されても長期的な信頼を失います。研究者の発信は、研究そのものと同じくらい慎重さが問われます。発信の具体的な技法は 研究発信の工夫 で扱っています。

リジェクトされたときに考えること

リジェクト通知が来た日は、落ち込んでいいと思います。数ヶ月から数年かけた研究が認められなかったと感じる感覚は、研究者なら誰でも知っているものです。無理にポジティブに解釈しようとせず、その日は研究のことを考えずに過ごしていい。「すぐに次の投稿先を考えよう」と前向きに振る舞うのは、心が追いつくまで待ってからでかまいません。

感情が動いているうちは、査読コメントを正確に読めません。数日置いてから、改めて査読レポートを開きます。そのときに自分に向ける問いは決まっていて、なぜリジェクトされたのか、つまり査読者は何を問題視したか。そのうち、自分でも気になっていた弱点はどれか。改善可能なものと、今回のスコープ外のものはどう分かれるか。この三つを順に確認していくと、リジェクトの中身が冷静に見えてきます。

同僚や指導教員と読み合わせるのも有効です。第三者の目線が入ると、「致命的だと思っていた指摘」が実はそれほどでもなかったり、逆にこちらが軽視していた指摘が根本問題だったりすることに気づけます。コメントを分析し終えたら、具体的な改善項目をリスト化します。方法論の見直し、追加分析、文献レビューの拡充、論理構成の調整――全部にこたえる必要はありませんが、価値のある改善は積極的に取り込みます。リジェクト後の修正を経て、最初の版よりはるかに良い論文になることは、実はよくあります。

戦略的な再投稿を組み立てる

再投稿のときに大事なのは、単純に別の雑誌に送るのではなく、どの雑誌なら今の論文が正当に評価されるかを考え直すことです。前回のリジェクト理由が「スコープ不一致」なら、よりフィットする雑誌を探す。「新規性不足」なら、より専門的な雑誌や応用系の雑誌の方が合うこともあります。スコープに合わない場所に何度送り直しても、結果は変わりません。

同じ研究でも、見せ方次第で違う顔をします。投稿先が変われば、イントロの強調点、結論の書き方、タイトルの言葉選びも調整の対象になります。再投稿は「別の雑誌に同じ原稿を送ること」ではなく、前回の査読で明らかになった課題を可能な限り解決し、新しい投稿先の特性に合わせて論文を調整する作業です。この手間をかけられるかどうかで、次の結果が決まります。

リジェクト経験を資産に変える

優れた研究者は、ほぼ例外なく多くのリジェクトを経験しています。学会で会う有名な研究者ほど、酒の席で「あの論文、最初に出した雑誌では落ちたんだよ」という話を聞くことが多くて、研究者人生の大半はリジェクトと共に進むのだと、何度も思い知らされます。

繰り返し同じ指摘を受けるパターンがあれば、それは自分の習慣的な弱点です。「方法論の説明がいつも不十分と言われる」「文献レビューが浅いと言われる」――こうしたパターンが見えたら、次の執筆ではそこにチェックポイントを置く。査読経験は、自分の研究者としての型を作るための一番の教材でもあります。一本の論文の運命に一喜一憂するより、何本もの論文を通して見えてくるパターンに注目するほうが、長期的には研究者として成長します。

並行して複数走らせる

一本の論文のリジェクトに心を持っていかれすぎないためには、複数のプロジェクトを並行して走らせておくのも有効です。ある研究がリジェクトされても、別の研究は進んでいる。「全リソースを一本に賭ける」構造だと、査読結果への依存度が高くなりすぎて、メンタルが揺れます。

派生的な研究の可能性を探るのも面白い選択です。査読者の指摘から、思いもよらなかった次のテーマが見えてくることもあります。リジェクトを「失敗」ではなく「次のテーマの種をもらった日」として捉え直せると、査読結果との付き合い方は劇的に楽になります。

メンタルをどう保つか

採択とリジェクトはどちらも感情を揺らします。指導教員、同僚、家族など、話せる相手に率直に話すことで、気持ちの整理がつきます。「自分だけじゃない」と知るだけでも、かなり楽になります。研究者同士のSNSや、研究室の雑談のなかで、リジェクトの経験を話題にできる文化がある場所は、それだけでメンタルの土台が整いやすくなります。

研究結果に一喜一憂しすぎないためには、研究以外の時間を意識的に残しておくことも効きます。趣味、運動、家族や友人との時間――これは 第4部:趣味・休息との付き合い方 でも触れたテーマです。結果に振り回されない安定した土台は、研究以外の場所にあります。査読結果が出る日も、その前後の日も、生活のリズムが変わらない人ほど、研究者として長く走れるというのが、僕がこれまで観察してきた印象です。

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