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学会発表の種類

学会での交流

学会発表には、大きく分けて口頭発表(オーラル)とポスター発表という二つの形式があります。どちらも研究を他者に手渡す場という点では同じなのですが、時間の流れ方も、聴衆との距離も、終わったあとに残るフィードバックの粒度も、ずいぶん違います。この章ではまず、この二つがどういう場で、どういう性質を持つものなのかを素描しておきます。それぞれの具体的な技法は、口頭発表ポスター発表 の節で詳しく書きます。あわせて、初めて壇上に立った日のことを書いた コラム:初めての学会発表で学んだ「伝える」ということ も置いてあります。

口頭発表とポスター発表は、何が違うのか

口頭発表は、10〜20分ほどのあいだに、スライドを使って一対多に語る形式です。聴衆の数は多く、一人ひとりとは話せませんが、そのぶん、研究をひとつのストーリーとして提示できる強みがあります。質疑応答で予想外の視点に出会える楽しさもあって、終わったあとに「あの質問、効いたな」と何日も反芻することになる発表は、決まって口頭の方です。話の流れに乗ってもらいやすい一方で、その流れを自分でコントロールしきらないといけない、という負荷もあります。

ポスター発表はまったく別の経験です。2〜3時間のセッションのなかで、立ち話の形で一人ずつに説明していく形式で、相手の専門や関心に応じて説明をその場で変えられます。議論の深さが出やすく、「同じ話を何度もすることで、自分の研究の要点が自分のなかで整理されていく」という副産物もあります。ポスターセッションを終えると、声は枯れているのに、頭はやけにすっきりしている――というのは、ポスター発表をしたことのある人の多くが経験する不思議な感覚です。

ざっくりした目安としては、完成した物語を持っているなら口頭、まだ議論しながら育てたい研究ならポスター、と考えると選びやすくなります。初めての学会発表なら、まずはポスターから入るのも手です。個別対話のなかで、自分の説明がどこで詰まるか、どの図が伝わらないかが、かなりはっきり見えてきます。最初から大きなホールで一対多に話すよりも、立ち話の手応えで自分の研究を確かめるほうが、地に足がつきます。

どちらの形式でも変わらないこと

形式は違っても、学会発表の本質はひとつです。あなたの研究を他者の視点にさらして、自分ひとりでは気づけなかった輪郭を受け取ること。質問や批判は研究を値踏みする場ではなく、研究を一緒に育てる場です。攻撃されているように感じる瞬間があっても、たいていの場合、相手はあなたの研究を面白がっているからこそ口を開いている。この前提を腹に収めておくと、本番での落ち着き方がだいぶ違ってきます。

僕自身、同じ研究を口頭でもポスターでも発表したことがありますが、得られるフィードバックの種類はまったく違いました。口頭のあとには「研究全体の位置づけ」について聞かれることが多く、ポスターのあとには「この図のこの部分」のような粒度の細かいコメントが残った。同じ研究を別の解像度で眺められた、という意味で、両方を経験できたのは贅沢な学習機会でした。機会があれば、あなたも一度、両方の形式を試してみてください。研究の見え方に、新しい奥行きが生まれます。