第6部:発信・評価・フィードバック

卒業研究の段階では、ここから先は読み飛ばしてかまいません。 ただし、もし卒研で学会発表をする機会があるなら、口頭発表とポスター発表の章だけは目を通しておくと役に立ちます。論文投稿、査読、国際会議といった話は、修士課程以降に必要になったら戻ってきてください。
第6部は「伝える」「評価される」「また伝える」の往復についての話です。研究はあなたの机の上で完成するものではなく、学会や査読、ときにはSNSの一言まで含めた、他者との対話のなかで少しずつ磨かれていくものです。ここではその対話に参加するための技法と心構えを、僕が発表と査読の現場で学んできたことを交えて書いていきます。
学会発表(口頭・ポスター)の技法、国内会議と国際会議の使い分け、論文投稿と採択・リジェクト、査読を受ける側/する側の作法、SNSや広報まで——研究を世に問うときに通る大半の場面が、この部のどこかに位置づくはずです。
第5部との役割分担を一行で言えば、第5部が「概念をつくる」技法、第6部はその先で つくった概念をどう名付け、どう手渡すか です。発表や査読は、あなたの概念が他人の言葉に翻訳されていく場でもあり、そこで受け取る反応が次の概念の種になります。手渡したぶんだけ研究が前に進むという実感は、繰り返してみないと掴めない感触です。
学会発表の具体的な進め方、つまり予稿の書き方、練習の組み方、当日までの動き方は、プロセスの文脈で 第3部:学会発表(予稿・練習・発表) に書きました。第6部では、その場面ごとの「技法」と「技芸」を深掘りします。プロセスとしての段取りは第3部、その場で使う芸は第6部、というふうに行き来して読んでもらえるとちょうどいいと思います。
発表も査読も、最初は緊張するものです。僕自身、はじめての発表では原稿を丸暗記して本番で真っ白になりましたし、はじめての査読返答では書きすぎて編集者に呆れられました。それでも、この対話の場を避けずに立ち続けた分だけ、研究者としての輪郭がはっきりしてきたと思っています。あなたが自分の研究を誰かに届けようとするとき、この部が小さな手がかりになれば幸いです。