あとがき
この「古池研究室の研究のすすめ方」をここまで読んでいただき、ありがとうございました。
9つの部を通じて、研究者になることの意味から始まり、具体的な研究スキル、時間管理、キャリア発展、そして未来への展望まで、研究者としての歩みのあらゆる側面について考えてきました。これらの内容は、私自身の研究者としての経験、多くの学生との対話、そして学術コミュニティでの交流から得られた知見をもとに構成されています。
この本に込めた思い
研究指導書というと、往々にして技術的な手法や論文の書き方といった実務的な内容に焦点が当てられがちです。しかし、私がこの本で最も重視したかったのは、研究者として生きることの意味と価値について深く考えることでした。
研究は単なる仕事ではありません。それは知的好奇心を原動力とし、社会に貢献し、人類の知識を前進させる営みです。そして何より、研究者自身の人格形成と自己実現の場でもあります。技術的スキルは重要ですが、それを支える哲学と価値観があってこそ、真に意義ある研究が可能になるのです。
変化する時代の中で
この本を執筆している現在、研究を取り巻く環境は急速に変化しています。人工知能の発展、オープンサイエンスの普及、グローバルな課題の複雑化、社会からの研究への期待の高まり—これらすべてが、研究者に新しい能力と視点を求めています。
しかし、どれほど時代が変わろうとも、研究の本質は変わりません。真理を探究する好奇心、困難に立ち向かう勇気、他者と協働する知恵、社会に貢献する意志—これらの基本的な価値は、いつの時代の研究者にとっても普遍的なものです。
読者の皆さんへ
この本を手に取ってくださった皆さんは、研究の道を歩み始めたばかりの方もいれば、既に経験を積まれた方もいることでしょう。どのような段階にある方であっても、この本の内容が皆さんの研究活動と人生に何らかの価値をもたらすことができれば、著者としてこれほど嬉しいことはありません。
研究者の道のりは決して平坦ではありません。失敗や挫折、迷いや困惑—これらはすべて研究者なら誰もが経験することです。しかし、それらの困難も含めて、研究者として生きることは深い充実感と喜びをもたらしてくれます。
皆さんが研究を通じて新しい知識を創造し、社会に貢献し、そして自分自身も成長していかれることを心から願っています。そして、皆さん一人一人の研究活動が、より良い世界の実現に寄与することを確信しています。
感謝とともに
最後に、この本の執筆にあたって支援をいただいたすべての方々に深く感謝いたします。古池研究室の学生の皆さん、同僚の研究者の皆さん、そして研究者を志すすべての方々—皆さんとの対話と交流があったからこそ、この本を書くことができました。
研究は決して一人で行うものではありません。多くの人々の支援と協力があってこそ、価値ある研究が実現されます。皆さんも、研究コミュニティの一員として、相互に支え合い、学び合いながら、共に研究の発展に貢献していってください。
皆さんの研究者としての歩みが、充実したものとなることを心より祈念しています。