研究コミュニティへの貢献
自分の研究を進めるのとは別に、分野そのものを支える仕事があります。査読、学会運営、後進の指導、道具の公開。どれも直接の見返りはありませんが、これらが止まると分野は回らなくなります。
学会運営では、プログラム委員として採否に関わると、分野の数年の流れに直接効きます。セッション座長は地味ですが、議論が動くかどうかは座長の采配で変わります。学生セッションやメンタリング企画の運営は、次世代育成への直接の貢献です。最初は雑用に近いところから始まりますが、長く関わるうちに、自分の分野がどう動いているかを学ぶ場になります。
自分が作った手法やツールを共有することも、同じ文脈の仕事です。オープンソースでの公開、チュートリアル、講習会。短期的には自分の優位を手放すように見えますが、道具を公開した人のところに人と知見が集まるので、結果としてそのほうが研究も進みます。
貢献の形はキャリア段階で変わります。学生やポスドクの時期は、学会に参加し、研究会に出て、査読補助や研究室セミナーの企画といった小さなところから始める段階です。独立してからは、査読を定期的に引き受け、プログラム委員や座長を務め、後輩の指導を始めることになります。シニアになると、学会理事や編集委員、大型プロジェクトの統括など、分野の方向性に関わる役割が増えます。
注意点が一つあります。頼まれたものを全部引き受けていると、ある時期に研究時間が消えます。 気持ちよく断ることも、長く貢献を続けるための技術 です。いま自分がいる段階で引き受けられる量を見て、範囲を少しずつ広げていくほうが続きます。