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未知に向き合う態度

研究の世界は「わからないこと」であふれている

研究を始めたばかりのとき、まず直面するのは知識の不足ではなく、「わからないことの多さ」かもしれません。 何をすればいいのかわからない、どこから手をつければいいのかわからない、周囲の議論についていけない。 こうした感覚に戸惑うのは、ごく自然なことです。

しかし、それこそが研究の本質でもあります。 研究とは、すでにわかっていることをなぞる営みではなく、まだ解き明かされていないこと、未解決の問い、未整理の現象に挑む営みです。 つまり、「わからなさ」は研究において避けるべきものではなく、むしろ最初の資源であり、出発点なのです。

わからなさを引き受ける

未知に向き合う態度は、単に勇気や根性の問題ではありません。 大切なのは、わからないことを恥じず、正面から引き受けることです。 「なぜわからないのか」「どこが曖昧なのか」「どの部分を切り出せば手がかりが見つかるのか」を問い続ける中で、 私たちは一歩ずつ理解に近づいていきます。

周囲と比べて焦る必要はありません。 むしろ、自分が「わからない」と感じていることに敏感でいるほうが、問いの種を見つけやすいともいえます。 周囲がなんとなく流している疑問を拾い上げることが、研究の突破口になることもあるのです。

不確実性を楽しむ

研究においては、不確実性は完全には消せないものです。 実験結果が予想と違う、分析がうまくいかない、そもそもテーマ設定が適切か不安になる。 そうしたときにこそ、「これこそが研究だ」と自分に言い聞かせることが大切です。

未知と向き合う態度とは、不確実性に押しつぶされないだけでなく、むしろそれを楽しみ、好奇心の原動力に変えることです。 研究者の多くは、そうした感覚の中にこそ、この営みの魅力を見出しています。

この節のまとめ

  • 研究は「わからなさ」を出発点とする営みである
  • 未知に向き合う態度は、わからないことを恥じず、問い続ける姿勢である
  • 不確実性を楽しむ感覚が、研究の魅力を支えている