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導入

おめでとう!

あなたは今日、「 (退屈で) 受動的な学び」の時期から、「(自由で!)能動的な実践」の時期に移行します。 なんと素晴らしいことでしょうか。

僕にもあったその瞬間を思い出すだけで、胸がワクワクします。

注記: 本書はLLMを相棒に書いています。誤りが残っている可能性があるので、自分の目で確認しながら読んでください。事情と誤り報告のお願いは末尾のこの本の作り方についてにまとめました。

そもそも「研究」って何でしょう

研究室に配属されたばかりの頃、こんなことを考えたことはないでしょうか。研究ってそもそも何だろう。学会発表や論文執筆は、本当に自分にできるのだろうか。研究をしている人って、何か特別な人たちなんじゃないか。

まず言葉そのものに立ち戻っておきます。「研究」は、要するに 何かを深く知ろうとし、まだ誰もよくわかっていないことを自分なりに解き明かそうとする営み ――それだけのことです。

だから、何を問うかはあなた次第です。誰かが「これを研究しなさい」と差し出してくれるものではなく、世界のどの隅っこに自分の手を伸ばすかを、あなた自身が選ぶ。研究の自由と難しさは、まさにここに集中しています。問いを差し出されないからこそ自分で立てる必要があり、自分で立てたからこそ、その問いに責任を持てる。

そして、これは特別な人のためのものではありません。学部生として卒業研究に取り組むとき、修士課程で自分の問いを深めるとき――あなたはその瞬間から、研究という営みのなかにすでに立っています。研究を職業にするかどうかは、ずっと先で考えればいい話です。最初から完璧な問いを持っている必要もありません。その「自分の問いの立て方」も含めて、これから一緒に見ていきます。

この本の読み方

本書は、卒業研究から修士課程までに実際に使う話を本編(第1部〜第8部)に置きました。その先で必要になる話――博士課程、研究費、共著、査読する側の仕事など――は、巻末のこの先の地図に数百字ずつの概説としてまとめてあります。手順として使える厚みはありませんが、そういう世界があると知らないまま進まないために置いています。

頭から順に読み通してもかまいません。ただ、いま自分がいる段階から入るほうが早いはずです。

あなたの段階まず読むところ
研究室に入ったばかり(学部3年)第1部・第2部で研究という営みの輪郭をつかむ。手を動かすほうは第3部の研究テーマを決める日々の研究の進め方から。並行して第4部で時間の使い方を整える
卒業論文を書き始める第5部と第6部が本体です。論文から逆算する研究設計で全体を組み、論文執筆のプロセス学位論文の構造を書きながら引く
初めて外に出す(学会発表・論文投稿)第7部。口頭発表とポスター発表論文投稿プロセス査読の仕組み研究倫理と盗用は外に出す前に一度読んでおいてください
進学を考えている・迷っている第7部・第8部と、巻末のこの先の地図。とくに博士課程とは何かアカデミアと企業研究

第1部は、研究の方法ではなく「どんな人生を送りたいか」「何を生産的だと考えるか」「困難とどう付き合うか」といった、少し大きめの問いから始まります。回り道に見えるかもしれません。ただ、何を問いに選び、なぜそれに時間を使い、結果が出ない時期をどう持ちこたえるかは、あなたがどう生きたいかと地続きです。急いでいるなら後回しでもかまいませんが、手が止まったときには戻ってきてください。

その「手が止まったとき」は、研究を続けていれば必ず来ます。自分は研究に向いていないのかもしれない、と思う日も来ます。そのときは第1部の詰まったときのセルフデバッグ・ガイド自己正当化パターン辞典を開いてみてください。通読するものではなく、困ったときに引く辞書として書いてあります。

三冊の関係

僕は同じ読者を想定して、三冊を書いています。

  • 大学時代の庭』――高校生から学部生に向けた読み物です。学ぶとはどういうことか、意志ではなく仕組みに委ねること、学習が複利で効いてくること、仲間という構造。研究の手前にある 構え を扱っています。
  • 研究の一歩目』――いまあなたが読んでいる本です。研究の やり方 。困ったときに引く本として書きました。
  • 認知的教育AIの地図』――僕の研究室で 何を研究するか 。どんな素材・方法・歴史があり、教育・学習支援システム研究という領野がいま何を問題にしているかを扱います。

本書の第1部は人生や学びの話から入るので、『大学時代の庭』と主題が重なります。本書では研究に固有の部分だけを書き、その手前の話は『大学時代の庭』に譲りました。とはいえ、本書は一冊で完結するように書いてあります。気になった話題があれば向こうを開いてみてください、という程度のつながりです。

姉妹編はどちらも研究室サイト https://koike-lab.org/ からアクセスできます。

この本の作り方について

ここまで読んでくれたあなたに、本書の作り方について正直に書いておきます。

本書はLLMを相棒に書いています。 全体の章構成や枠組み、伝えたい主張やトーンは僕自身のものですが、各章の文章の起草、研究室で繰り返してきた話の整理、章ごとの語りの肉付けには、LLMを大きく使っています。素のままの僕一人で同じ範囲を一冊に編むのは、今の仕事と時間配分のなかでは現実的ではありませんでした。

それでも踏み切ったのは、研究室に入ってくる学部生のための「研究の進め方」の地図を、「いつかきちんとした完成品が書けたら出す」と引き延ばすよりも、 多少粗削りでもいまのうちに渡しておきたい と思ったからです。理想を待つあいだに、目の前の学生たちは卒業研究を始めなければなりません。

代償として、 本書は論文ほど厳格にチェックされていません 。LLMが生成する文章には、もっともらしく見えて事実とずれている部分(いわゆるhallucination)が混じります。 誤った主張・存在しないエピソード・おかしな具体例が、まだ残っている可能性があります

そういうわけで、お願いを二つ書かせてください。

  • 書いてあることをそのまま信じきらず、自分の目で確認しながら読んでください 。とくに事実関係・固有名詞・数値については、必要に応じて元の文献にあたってもらえると助かります。
  • おかしいと感じた箇所、明らかに事実と違う箇所、説明が不十分な箇所を見つけたら、ぜひ僕まで知らせてください 。連絡先はウェブサイトにあります。あなたが見つけてくれた箇所を直していくことで、本書はだんだん信頼できる地図になっていきます。これは仕様であって、欠陥ではありません。

なお、あなた自身が論文を書くときに生成AIをどう使うかは、本の原稿とは別の制約のもとにある話です。そちらは生成AIと論文執筆に書きました。

それから、はっきり書いておきます。 本書の内容を、僕がすべて深く理解して書いているわけではありません 。各章のテーマには、僕より遥かに詳しい専門家がたくさんいます。本書はあくまで、ある一人の研究者が、研究室に入ってくる学生に向けて、自分の理解の届く範囲で描いた地図です。

そういう前提で、ゆるく、しかし真剣に読んでもらえると嬉しいです。

あなたの歩みを支える小さな灯り

これから研究室に入るとき、あるいは進学を決めたとき、「何から手をつければいいのか」「どんな景色が広がっているのか」――この本が、その全体像を見渡す助けになることを願っています。

最初は少し怖くてもかまいません。わからないことだらけでも、走りながら学べます。この本が、あなたの歩みを支える小さな灯りとなりますように。