導入

おめでとう!
あなたは今日から「 (退屈で) 受動的な学び」の時期から、「(自由で!)能動的な実践」の時期に移行します。
なんと素晴らしいことでしょうか。
僕も過去にあったその瞬間を思い出すだけでも胸がワクワクします。
そもそも「研究」って何でしょう
ここでいったん、言葉そのものに立ち戻っておきたいと思います。
「研究」という言葉自体は、実はとても抽象的な営みを指しています。要するに、 何かを深く知ろうとする、まだ誰もよくわかっていないことを、自分なりに解き明かそうとする ——それだけのことです。
だから、何を問うかはあなた次第です。誰かが「これを研究しなさい」と差し出してくれるものではなく、世界のどの隅っこに自分の手を伸ばすかを、あなた自身が選ぶ。研究の自由と難しさは、まさにここに集中しています。問いを差し出されないからこそ自分で立てる必要があり、自分で立てたからこそ、その問いに対して責任を持てる。
そう書くと急に身構えてしまうかもしれませんが、安心してほしいのは、その「自分の問いの立て方」を含めて、これから一緒に見ていくということです。最初から完璧な問いを持っている必要はまったくありません。
ありがちな最初の戸惑い
大学に入学して間もない頃や、研究室に配属されたばかりの頃、あなたはこんなことを考えたことはないでしょうか。
研究ってそもそも何だろう? 学会発表や論文執筆は本当に自分にできるのだろうか? 研究をしている人って、何か特別な人たちなんじゃないのか?
こうした問いは自然なものです。そして実のところ、長く研究をしてきた人であっても、折に触れて立ち返る根本的な問いでもあります。
この本は、そうした問いを抱えるあなたに向けて書いたものです。これから研究の世界に足を踏み入れる人、あるいはすでにその世界で歩み始めた人に、研究という営みのなかで僕自身が考え続けてきたことを、できるだけ正直に伝えたいと思っています。
研究は特別な人のためのものではない
研究とは、何か特別な人のためのものではありません。学部生として卒業研究に取り組むとき、修士課程で自分の問いを深めるとき、博士課程で世界に新しい知を提示するとき——あなたはその瞬間から、研究という営みのなかにすでに立っています。研究を職業にするかどうかは、ずっと先で考えればいい話です。まず、あなたが研究という営みのなかにいる、というところから始めたいと思います。
まず、生き方の話から始めます
ひとつ、先におことわりしておきたいことがあります。
この本はいきなり研究の方法やキャリアの話には入りません。第1部では、研究の手前にある 「どんな人生を送りたいか」「何を生産的だと考えるか」「困難とどう付き合うか」 といった、少し大きめの問いから始めます。
なぜそうしたのか。研究の質は、技法だけで決まるものではないと、僕はずっと感じてきたからです。何を問いに選び、なぜそれに時間を使い、結果が出ない時期をどう持ちこたえるか——こうした判断のしかたは、あなたがどう生きたいかと地続きにつながっています。だから先に、その「生き方の側」の話をしておきたいのです。
研究法を期待して開いてくれた人には、最初は迂遠に感じるかもしれません。それでも、第1部を飛ばさずに読んでおくと、第2部以降の実践の章が、ぐっと自分のものになるはずです。
あなたの歩みを支える小さな灯り
これから研究室に入るとき、あるいは進学を決めたとき、「何から手をつければいいのか」「どんな景色が広がっているのか」——その全体像を見渡す助けになることを願っています。
最初は少し怖くてもかまいません。わからないことだらけでも、走りながら学べます。この本が、あなたの歩みを支える小さな灯りとなりますように。
