コラム:計画倒れから学んだこと
「今度こそ完璧な研究計画を立てよう」——多くの研究者がこんな意気込みで、詳細な研究計画表を作成します。 3か月ごとに細かくスケジュールを区切り、各段階での成果物まで詳細に記載する。 これさえあれば順調に研究が進むと確信するのは、自然なことです。
しかし、現実は計画通りには進まないものです。 予備実験で想定外の結果が出て、研究の方向性を大幅に修正する必要が生じる。 当初3週間で終わる予定だった実験準備が2か月かかり、 綿密に立てた計画表が、わずか1か月で実情と合わなくなってしまう—— こうした経験は研究者なら誰もが通る道です。
多くの人が「計画が狂った」ことに強いストレスを感じます。 スケジュール通りに進まない自分を責め、毎日修正し続ける計画表を見るたびに 焦りと不安が増していくという状況は、決して珍しいことではありません。
しかし、ここで重要な認識の転換が必要になります。 「計画が変わることは失敗ではない。むしろ、研究が進んでいる証拠」 という視点を持つことができれば、状況は大きく変わります。
効果的なのは、計画の捉え方を根本的に変えることです。 計画を「絶対に守るべき約束」ではなく、「現時点での最善の見通し」として考える。 そして、計画の修正を失敗ではなく、新しい発見への対応として捉える。
実際、研究の過程で生まれる予想外の展開こそが、 最も価値ある発見につながることが多いのです。 硬直した計画に固執していては、そうした機会を見逃してしまいます。
研究計画は「旅の地図」のようなものと考えるとよいでしょう。 目的地は決まっているけれど、途中で興味深い脇道を見つけたら寄り道することもある。 迂回路を通ることになっても、それは新しい景色を見る機会なのです。
もちろん、無計画でよいという意味ではありません。 大まかな方向性と重要なマイルストーンは設定し、定期的に見直すことが大切です。 けれども、その計画は柔軟性を持ち、変化を恐れないものであるべきなのです。
研究計画は、研究の質を高めるための道具であって、 研究者を縛るための鎖ではない—— この理解を持つことで、研究生活は格段に豊かになります。