コラム:研究者の1日のリアル
研究者というと、「自由な時間を使って好きなことをしている」というイメージを持たれることがあります。 けれど実際は、自由であるからこそ、時間の使い方や自己管理に高い工夫が求められます。 研究の現場は一見華やかに見えても、日々の地道な積み重ねがあって初めて成り立つものです。
私自身、学生時代はおおよそ10:00から22:00まで研究室にいて、実験、議論、論文執筆に取り組んでいました。 今では8:30から22:00くらいのスケジュールですが、日中は授業、学生指導、会議、夕方以降はオンラインミーティングや勉強会、 といった具合に多様な活動があります。もちろん、子どもの都合で早く帰る日もあれば、 家で子どもの面倒を見ながら会議に参加することもあります。 夜は研究を離れ、2~3時間ほどゲームをしたりライトノベルを読んだりと、趣味の時間を大切にしています。
誤解しないでほしいのは、「長時間働くこと=偉い」という話ではないことです。 研究者の世界は、確かに緩やかな競争がありますが、 それは単に他者と比べられる競争というより、「自分がやりたいことをどれだけ形にできるか」という内面的な競争です。 だからこそ、つい時間をかけてしまうことがある。 ただしそれは義務感ではなく、知的好奇心や楽しさに突き動かされているからです。
また、時間を伸ばすのではなく効率を高めることが重要だと強調したいです。 私自身、朝の時間を使って仲間とポモドーロ・テクニック(30分単位でやることを決める方法)を共有しあったり、 夜にはその日の進捗を振り返って「どこが進んで、何が残ったか」を確認したりしています。 こうした小さな習慣の積み重ねが、結果として大きな成長につながるのです。
もっとも、私も決して完璧ではありません。 一方で、日中に3~4時間YouTubeを見てしまうという失敗も未だにします。 気がつくと動画から動画へと移動し、あっという間に時間が過ぎていることもある。 こうした失敗から学び、いかに軌道修正していくかが、自己管理の核心だと感じます。
加えて、研究生活は「時間をどれだけ捧げるか」だけでなく、 「どうバランスをとるか」が大事です。 私の場合、家族との時間や趣味の時間がむしろリフレッシュとなり、 新しいアイデアを生むきっかけになることも少なくありません。 そして、実は学生時代から今に至るまで、私は土日や祝日に研究作業をほとんどしないという、 研究者としては珍しい習慣を守っています。 これは平日にしっかり頑張り、メリハリを大事にするという信念の表れです。 無限に続くように見える研究だからこそ、意識的に切れ目を作ることで、 かえって平日の密度を高められると感じています。
最後に伝えたいのは、研究は決してスーパーマンのような生活を求めるものではないということです。 人それぞれに合ったペースがあり、日々の試行錯誤の中で「自分らしいやり方」を見つけていくものです。 失敗も挫折も、試行錯誤の過程の一部。 自分なりのリズムを見つけて、少しずつ前に進んでいく。 それが、研究者としての日常を支える現実の姿だと、私は思います。