研究計画の立て方
あなたの問いを解決するための道筋
研究計画の本質は、あなたの問いを解決するために必要なステップを明確にし、限られた時間で確実に成果を出す道筋を作ることです。
完璧すぎる計画は不要です。方向性を明確にして小さな改善を積み重ね、「走りながら学ぶ」姿勢が重要です。
情報系研究の段階的アプローチ
理解→設計→実装→評価の循環
情報系研究、特に人間を対象とするシステム開発では、技術開発と人間理解のバランスが重要です。
理解段階: あなたの問いに関わる人間の行動や思考プロセスを調査し、支援すべきポイントを特定します。
設計段階: 理解した内容を技術的に実現可能な形に設計し、他分野への応用可能性も検討します。
実装段階: 核心的な機能から始めて段階的にプロトタイプを発展させ、設計コンセプトの実現可能性を検証します。
評価段階: システムの効果やユーザビリティを測定し、改善点を特定して次の循環につなげます。
リスク管理と研究計画書
主要なリスクへの対策
システム開発研究では技術的不確実性が伴うため、技術的リスク(想定技術が使えない)、実装リスク(予想以上に困難)、評価リスク(被験者確保困難、期待効果なし)への代替案を準備しておきましょう。
研究計画書の構成
研究計画書は基本的に、研究概要(タイトル・目的・期待成果)、背景・関連研究、研究アプローチ(手法・設計・評価)、スケジュール・リソースの4部構成で作成します。
あなたの問いを計画書で表現する
研究タイトルは抽象的な「AIを活用した教育システム」ではなく、「プログラミング初心者の思考プロセス可視化による適応的学習支援システム」のように具体的に表現しましょう。
研究目的では、まずあなたの素朴な問い(「なぜ初心者は同じところで詰まるのか?」)を明確にし、そこから生まれる学術的目的と期待される価値(理論的・技術的・実践的)を整理します。
スケジューリングと進捗管理
段階的なマイルストーン設定
年間を3-4ヶ月のクォーターに分け、各期間で明確な成果目標を設定します。第1クォーターで問題定義完了、第2クォーターでプロトタイプ完成、第3クォーターでシステム完成、第4クォーターで評価・論文化完了といった具合です。
ガントチャートで研究全体を可視化し、文献調査→要求分析→設計→実装→評価→論文執筆の各段階の重複と依存関係を明確にしましょう。
計画調整の原則
研究の核心価値を保持しつつ、実現可能性を重視した調整を行います。完成度の高い小さな成果を優先し、必要に応じてスコープ縮小や手法変更を検討します。
週次・月次レビューで進捗をモニタリングし、指導教員との定期面談で方向性を確認しましょう。
実行のコツ
小さな改善の積み重ね
完璧を目指さず、毎週小さな成果を積み上げることを重視します。今週新しく分かったこと、動くプロトタイプの改善、問いの精緻化など、小さくても確実な進歩を大切にしましょう。
文献で学んだ理論をすぐにプロトタイプで試したり、実装を通じて理論理解を深めたりといった並行的な学びが効果的です。完璧な理解を待たずに行動し、困ったときは一人で悩まず相談することが重要です。
この章のまとめ
研究計画は「あなたの問い」を解決するための道筋を明確にするものです。理解→設計→実装→評価の循環的アプローチを重視し、「走りながら学ぶ」姿勢で小さな改善を積み重ねましょう。完璧を目指さず、段階的発展を心がけ、困ったときは相談することが成功の鍵です。