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スライドの作り方

学会発表でも広報でも、スライドは研究を伝えるもっとも手に取りやすい媒体です。しかし、いざ作ってみると「情報が多すぎる」「言いたいことが伝わらない」「時間内に収まらない」といった問題にぶつかります。スライドは論文の縮約版ではなく、聞き手の理解プロセスに寄り添って設計された、時間軸のあるコミュニケーションです。ここでは、僕が研究発表で試行錯誤してきた中で効果を実感している設計原則と実践的な技法をまとめます。

まずは「1スライド1メッセージ」を守る

スライドで最もよくある失敗は、1枚に複数のメッセージを詰め込むことです。読み手の視線は迷い、話し手も何を強調したかったのか見失います。原則として、各スライドには、聞き手に持ち帰ってほしいメッセージを1つだけ書く。これだけで、スライドはぐっと話しやすくなります。

具体的には、スライドの上部にタイトル代わりに「そのスライドで伝えたい結論の1文」を置く方法が効果的です。たとえば「結果」ではなく「提案手法は既存手法より精度を15%向上させた」と書く。これにより、聞き手はそのスライドの論点を一目で把握できますし、あなた自身も話の軸を見失わずに済みます。

聞き手の認知負荷を下げる

スライドの役割は、話を聞く負荷を下げることです。話の補助輪であって、話の代替物ではありません。文字は最小限に抑えて、1スライド30〜60文字を目安に。全文を書いてしまうと、聞き手はスライドを読み始めてあなたの話を聞かなくなります。図を主役にして、数値や関係性は表より図、図より簡略図に寄せる。色は3色まで、強調色・補助色・ベースの3色で十分で、色が多いと情報の階層が消えます。そして、余白を残すこと。びっしり埋めると印象が重くなるので、2〜3割は空白を残しておくと聞き手の目が休まります。

発表の流れを「物語」として設計する

スライドを1枚ずつ作る前に、発表全体の流れを箇条書きでメモに書き出してみてください。問題提起から始めて、関連研究と限界、提案、検証、結果と考察、まとめと展望、という骨格で考えると筋が通りやすくなります。なぜこの研究が必要なのか、何がまだ解けていないのか、僕たちは何を提案したのか、どう確かめたのか、何がわかったのか、これから何が残っているのか――この六つの問いに順に答えていく構成にすれば、聞き手の思考の流れに自然に乗ります。

各ブロックに何枚必要か見積もってから作り始めると、時間配分の事故が減ります。「結果」だけ十枚あって「問題提起」が一枚しかない、というアンバランスな構成は、ブロック単位で枚数を見積もる習慣があれば防げます。

よく使うスライドの「型」

発表の型にはいくつかの定番があります。迷ったらこれらを使い回すと安定します。Before / Afterは現状と提案後を対比する型で、効果の可視化に強い。プロセス図は研究のステップを順に示すもので、方法セクションで有用です。比較表は既存手法との違いを一覧で示せるので、関連研究の位置づけに使える。ビッグナンバーは主要な結果を大きな数字1つで示す型で、印象に残ります。クローズアップは図の一部分を拡大してポイントを指示する型で、聴衆の視線を一点に集めたいときに効きます。

質疑応答に備える「予備スライド」

本編が終わったあとに、予想される質問への回答スライドを「予備スライド」として用意しておきます。本編から取り除いた詳細データ、補足実験、限界の議論などを入れておくと、質問が出たときに即座に提示できて説得力が上がります。「ご質問ありがとうございます。実はその点について補足のスライドがありまして」と即座に切り替えられると、準備の深さが伝わります。

リハーサルで気付けること

スライドは机上で完成しません。必ずリハーサルを経て仕上げます。まず一人リハーサルで、時間を計って一通り話してみる。詰まる箇所が、メッセージの弱いスライドです。次にメンターや同僚に見てもらう。自分では気付かない前提知識のギャップを指摘してもらえます。最後に会場の画面で確認できるなら、しておく。プロジェクタの色再現や文字の視認性は、会場で見るまでわからないことがあって、当日「まさか」とならないためにも、本番前のチェックは効きます。

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