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研究者の多様性

多様な研究者たち

ひとつではない研究者のかたち

研究者というと、優れた頭脳を持つ限られた人々というイメージを抱く人は少なくありません。けれども、実際の研究者の世界は驚くほど多様です。分野によって扱う対象も、使う方法も、日々の働き方さえまるで違います。

理論の最前線で思索を深める人もいれば、実験現場で体を動かしてデータを集める人、コンピュータの前に張りついてモデルを改良し続ける人、フィールドに赴いて現場の声を拾い上げる人もいます。一日中机に向かっている研究者もいれば、週の半分は屋外にいる研究者もいる。それぞれの分野には、それぞれの「研究者の身体性」のようなものがあって、それを知るだけでも研究の世界は思っていたよりずっと広いと感じられるはずです。スタイルもまた人によって大きく異なります。着想の独創性で勝負する人、緻密な実験で裏付けを積み上げる人、議論の中で他者の発想を引き出して新たな知の流れをつくる人。それぞれの強みやアプローチがあり、どれかひとつの型に収まりません。

キャリアの多様性

研究者の歩む道もまた多様です。大学院を経て学術の世界に残る人もいれば、産業界に進んで新技術の研究開発に取り組む人もいます。行政や国際機関に関わり、研究成果を社会に還元する役割を果たす人、スタートアップを立ち上げて実装の最前線に挑む人、ジャーナリズムや教育の現場に身を置きながら研究的な態度を活かす人もいる。一度アカデミアを離れて産業界で経験を積み、また大学に戻ってくる人もいます。研究者という生き方は、もはや一本道ではありません。

肩書きやポジションでは、その人が研究者かどうかは決まりません。共通しているのは、問いを持ち、探究し、知を他者と共有しようとする態度です。どこに身を置こうと、その態度を持ち続ける限り、あなたは研究者であり続けられます。逆にいえば、立派な肩書きを持っていても、その態度を失った瞬間に、人は研究者ではなくなってしまうのかもしれません。だから将来の進路に迷ったとしても、「ここを選んだら研究者ではなくなる」と切り捨てる前に、「どこにいてもその態度を持ち続けるには何が必要か」と考え直してみてほしいと思います。

多様性が生む相互作用

研究の世界における多様性は、単に背景の違いにとどまらず、知のダイナミズムそのものを生み出します。異なる分野の人々が対話を重ねることで、思わぬ問いが立ち上がる。異なる文化や価値観に触れることで、これまで自明としてきた問いの前提が揺さぶられる。学際領域の面白さも、根っこをたどればこの多様性の効用にたどり着きます。

多様性のあるコミュニティの中では、競争だけでなく協働も生まれます。自分にない強みを持つ人に出会ったとき、比較や劣等感にとらわれず、どう互いを生かし合えるかを考える。そこから研究者としての成長が始まります。「自分には絶対にできないこと」をやってのける人を目の前にしたときに、嫉妬の代わりに「組めば面白いことができそうだ」と思えるかどうか。その小さな転換が、長い研究者人生のあちこちで効いてきます。

多様性を受け入れる難しさ

とはいえ、多様性を受け入れるのは口で言うほど簡単ではありません。異なるやり方や考え方に苛立ちを覚えることもあれば、他者の輝きに羨望や焦りを感じることもあります。多様性は、心地よさや安心感を脅かす場面さえあります。多様性は素晴らしい、と頭でわかっていても、実際にその中に身を置くと小さな摩擦が積もっていく。それは正直なところ、誰もが感じる感覚です。

だからこそ大切なのは、自分のスタイルを見つめ直し、他者を一方的に羨むのではなく、学び合う対象として尊重する態度です。「あの人はあのやり方で、自分はこのやり方で」と並列に置けるようになると、ずいぶん楽になります。研究者にとって、これは知的能力以上に大切な成熟のしるしだと僕は思っています。あなたがこの先たくさんの研究者に出会うとき、知識量や成果の多さよりも、この成熟をこそ手本にしてほしいと感じます。